一般的なオーガニックレストランの多くは、提携農家から規格に沿った有機野菜を仕入れて調理します。しかし、WE ARE THE FARM 渋谷の根幹を支える株式会社ALL FARMのアプローチは全く異なります。彼らが実践しているのは、「固定種野菜」を中心とした、無農薬・無化学肥料による自家栽培です。
現代のスーパーに並ぶ野菜の9割以上は、均一な形や成長スピードを求めて人工交配された「F1種(一代交配種)」です。F1種は大量生産に適している反面、次世代に種を残すことが難しく、品種本来の強い個性や土壌特有の風味が削ぎ落とされがちです。対して、代々種を採り継いできた「固定種」は、天候や環境に左右されやすく形も不揃いですが、植物本来の濃厚な香り、えぐみのない深い甘み、そして力強い生命力を宿しています。
ALL FARMが掲げる「野菜のためにエゴを捨てる」という言葉には、飲食ビジネスにおける強烈な覚悟が込められています。「この料理を作りたいからこの野菜を育てる」のではなく、「土と畑の状態で今最も輝いている野菜を収穫し、そのポテンシャルを最高に活かす調理法を厨房で考える」という主客の逆転です。スタッフ自らが交代で千葉の畑に立ち、種まきから草むしり、収穫まで泥だらけになって行うからこそ、食材に対する嘘偽りのない敬意が皿の上に結実しています。