浜松市秋野不矩美術館は、60代にして既成概念を脱ぎ捨て、未知なるインドの赤土へと飛び込んだ一人の女性画家の魂を今に伝える聖地です。同時に、その奔放な芸術を受け止めるべく、藤森照信氏が天竜の自然と素材を対話させて作り上げた建築自体が、唯一無二の芸術作品として呼吸を続けています。
伝統的な日本画の枠に収まりきらない土の匂い、靴を脱ぎ捨てて床から見上げる作品との距離感、そして天竜杉の柔らかな温もり。それらが三位一体となって生み出す鑑賞時間は、日々の情報過多に疲れた私たちの感性を根底から解き放ってくれます。浜松・天竜の地に足を運ぶ際は、ぜひ時間にゆとりを持ち、大理石やサイザル麻の床に身を委ねて、秋野不矩が愛した大地の鼓動を全身で受け止めてみてください。