少年漫画の王道展開であれば、最終回で主人公とヒロインが結ばれるケースが一般的です。しかし、渚とカエデの関係が「明確に付き合っていない状態」で描かれたことには、物語構造的にも心理学的にも深い合理性があります。
カエデはかつて、復讐という妄執に囚われ、自分自身を見失っていました。渚に救われた彼女が直ちに渚へ依存する恋愛に走ってしまっては、精神的な真の自立とは言えません。彼女が「雪村あかり」という本来の自分を取り戻し、実力でトップ女優へと登り詰めるプロセスこそが、カエデという人間の再生に不可欠だったのです。
また、渚にとっても母の束縛から脱し、殺せんせーから託された「人を育てる技術」を現場で実践することが人生最大の命題でした。お互いが自らのアイデンティティを確立する途上にあるからこそ、安易な恋愛関係に回収されない「両片思い以上、夫婦未満」の崇高な距離感が、本作の人間ドラマを唯一無二の傑作たらしめています。