暖簾をくぐると、中華鍋がゴウゴウと火を吹く轟音と油の香ばしい匂いが一気に五感を刺激します。数ある名物の中で客の半数以上が注文するのが、看板メニューのルースチャーハンです。
「ルース(肉絲)」とは、青椒肉絲のルーツでもある豚肉の細切りを指します。兆楽のルースは、細切りの豚肉と細切りタケノコを強火で炒め、オイスターソースと濃口醤油をベースにした甘辛い餡でしっかりととじ込めたもの。これが、黄金色の炒飯の上に惜しげもなく並々と注がれます。
レンゲを差し込むと、熱々の餡がとろりと崩れ、下の炒飯から立ち上る湯気と混ざり合います。一口運べば、タケノコのシャキシャキとした軽快な歯ごたえと豚肉の旨味が広がり、やや甘めに仕上げられた濃厚な餡が口中を支配。しかし、驚くべきはその直後に訪れるバランスの良さです。土台となる炒飯は、卵とネギを中心にした極めてシンプルかつ薄味のパラパラ仕立て。濃厚なルース餡を受け止めるためにあえて塩味を控えめにしてあり、最後の一粒まで重たさを感じさせずに完食させる緻密な計算が光ります。
さらに、炒飯カテゴリーだけでも「五目」「エビ」「カニ」「カレー」など全9種類の炒飯を揃えるバリエーションの豊かさ。迷った末に結局ルースへ戻ってしまう中毒性こそ、半世紀近く愛され続ける理由です。