物語が終盤へと進むにつれ、善逸の「かっこよさ」は決定的な変容を遂げます。その最大の契機となるのが、同じ師匠のもとで育った兄弟子・獪岳(かいがく)との確執です。
弐から陸の型を使えるものの壱ノ型だけが使えなかった獪岳と、壱ノ型しか使えない善逸。二人はお互いに欠けた部分を持つ合わせ鏡のような存在でした。しかし、獪岳が生き汚さから鬼となり、その責任を取って慈悟郎が切腹したという報せを受けたとき、善逸の精神構造は完全に塗り替わります。それまでの「恐怖から逃れるために眠る」状態から脱却し、冷徹なまでの静けさを湛えて己の意思で抜刀する剣士へと変貌を遂げたのです。
自らが独自に編み出した「漆ノ型 火雷神(ほのいかづちのかみ)」は、獪岳と肩を並べて戦いたかったという叶わぬ願いと、愛する師匠への手向けとして誕生した技です。眠りに逃げず、現実の痛みと悲しみをすべて見開いた瞳で受け止めながら放つ一閃は、劇場版三部作として描かれる無限城編において、間違いなく善逸屈指の感動と熱狂を生み出すクライマックスとなるはずです。