当時の三谷幸喜氏は40代前半。映画や舞台、テレビドラマでヒットを連発し、名実ともに時代の寵児として第一線に君臨していました。周囲から称賛される機会ばかりが増えていた時期に、面と向かって人格ごと否定されるような厳しい言葉を浴びせられた精神的ショックは、想像を絶するものがありました。
三谷氏は後年のインタビューにおいて、言われた直後は頭が真っ白になり、悔しさと恥ずかしさで立ち尽くしたと語っています。しかし、反発して席を蹴ることはせず、言われた言葉の意味を自問自答し続けました。「自分はいつの間にか、観客を喜ばせるという美名の下で、キャラクターを単なるパズルのピースとして扱っていなかったか」。この問いかけは、その後の三谷作品における群像劇の深みへと昇華される決定的な転換点となったのです。