ネット上のQ&AサイトやSNSで頻繁に見られるのが、「真上で鳴っているように聞こえるから、徒歩数分圏内の空き地で誰かが爆竹でも鳴らしているのではないか」という誤認です。しかし、音響物理学および気象学の観点から見ると、これは大きな錯覚であることが分かります。
花火の開花音は、火薬の爆発によって生じる強力な低周波音です。低周波は高周波(金属音や電子音など)に比べて空気中で減衰しにくく、ビルなどの遮蔽物を回り込んで進む「回折現象」を起こしやすい性質を持っています。さらに、夜間特有の気象条件である「放射冷却による気温の逆転層」が発生している場合、上空に向かって進んだ音波が冷気層に屈折して地上へと跳ね返るため、通常よりも遠くまでクリアに音が伝播します。
このため、無風かつ澄んだ夜空であれば、打ち上げ場所から10km〜15km以上離れた場所であっても、まるで数ブロック先で大太鼓を叩いているかのような衝撃音として窓ガラスを震わせることがあります。「自分の町では何もイベントがないのに」と思っても、隣の市や川の対岸で開催されている花火が届いているケースがほとんどです。