古くから「湯冷めをすると風邪をひく」「冷たい風に当たると熱を出す」と信じられてきましたが、現代医学において寒さそのものが風邪の直接原因になることはありません。風邪(急性上気道炎)の直接原因の80〜90%は、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルスなどの病原微生物です。寒冷環境に身を置いただけでは、ウイルスが体内に存在しない限り風邪を発症することは物理的に不可能です。
ただし、「寒冷刺激」が感染の引き金(トリガー)になるというメカニズムは科学的に証明されています。体温が低下すると、生体防御反応として血管が収縮し、鼻腔や喉の血流量が減少します。これに伴い、ウイルスを絡め取って体外へ排出する粘膜バリア(線毛運動や唾液分泌)の機能が一時的に急低下します。つまり、すでに潜伏していたウイルスや周囲に浮遊する病原体に対し、防御扉を開け放してしまう状態が作られるのです。