杜撰のエピソードは有名ですが、「杜」という文字が本来持っていた意味はそれだけではありません。漢字の成り立ちを紐解くと、主に3つの系統に分かれます。
1. 植物名としての「やまなし(野梨)」
漢字の原義において、「杜」はバラ科の落葉高木である「ヤマナシ(山梨・野生のナシ)」を指す植物名でした。実が小さく酸味が強いこの樹木を表すために、木へんに「ト(土)」の音を当てて作られたのが字源です。
2. 遮断や閉鎖を意味する「ふさぐ」
「杜」には「ふさぐ」「とざす」という動詞の意味があります。代表例が「杜絶(とぜつ)」です。道や連絡が完全に途絶えることを意味するこの熟語において、「杜」は防壁のように遮る役割を果たしています。土を盛って木を植え、侵入を防ぐ結界を作った情景が由来とも言われています。
3. 神聖な空間を指す「もり(杜)」
日本の神社に行くと「鎮守の杜(ちんじゅのもり)」という表記をよく目にします。「森」が原生的な木々の生い茂る場所を指すのに対し、「杜」は「神域として人の手で整えられ、大切に守られてきた木立」を指す文化的ニュアンスを持ちます。宮城県仙台市の呼称「杜の都」も、屋敷林や寺社林など、街の歴史と調和して育まれてきた豊かな緑を表しています。